ブログ内検索

2023年8月10日木曜日

切手に見るナイチンゲール物語-5.ナイチンゲール誓詞-

現代看護の創始者フローレンス・ナイチンゲールの偉業を讃え、1893年アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト市にあるハーパー病院のファーランド看護学校 の校長リストラ・グレッターを委員長とする委員会で"ヒポクラテスの誓い"の内容を元に作成されたものです。


『ナイチンゲール誓詞(せいし)』とは、一言で表すと「看護従事者に対する倫理規範」のことです。


ナイチンゲール誓詞には、「患者の命を救うためにあらゆる手段を尽くす」という医療従事者としての心構え、「患者のプライバシーを尊重する」、「常に成長を目指して努力を続ける」という職看護師としての姿勢まで定められています。


『ナイチンゲール誓詞』は現在でも、医療・看護教育の現場で規範として活用されることが多く、アメリカの看護教育現場では、戴帽式や卒業式などのセレモニーで『ナイチンゲール誓詞』が活用されている一方、ナイチンゲールの母国イギリスでは、アメリカで作られた「ナイチンゲール誓詞」はあまり好まれていないようで使用されていません。


現代の医療現場においてもほとんどの国の看護教育で、ナイチンゲールの遺した文書や、彼女の思想に基づく教材が使われています。


この有名な誓詞は、実はその作成や編集にフローレンス・ナイチンゲール自身は携わっていません。


されどナイチンゲール誓詞の内容自体はナイチンゲールの考え方と合致する点も多いことから、『ナイチンゲール誓詞』という形で、看護師の倫理規範を定めることに貢献した」という意味ではやはりナイチンゲールの功績だと言えるのかもしれません。


実際ナイチンゲールは、彼女の"看護覚え書き"の中で、ナイチンゲール誓詞に対して、「私たちがこの道に入るにあたって、”誓い”などというものは必要ない」「厭世や失恋などの俗物的な理由とは違う、まったく別の理由で看護の道を志していると自覚するために、わざわざあえて『誓い』を立てる必要があるのか」「看護師という職業を、そんな次元の低いものと見なしているのだろうか」と書き記し誓詞に対してまっすぐな苦言を呈しています。


【ナイチンゲール誓詞一文】


われは此処に集いたる人々の前に厳かに神に誓わん。

わが生涯を清く過ごし、わが任務を忠実に尽くさんことを。

われは総て毒あるもの、害あるものを絶ち、悪しき薬を用いることなく又知りつつこれをすすめざるべし。

われはわが力の限りわが任務の標準を高くせんことを努むべし。

わが任務にあたりて、取り扱える人々の私事のすべて、わが知り得たる一家の内事のすべて、われは人に洩らさざるべし。

われは心より医師を助け、わが手に託されたる人々の幸のために身を捧げん。


切手は1939年ベルギー発行の「国際赤十字創立75周年記念切手」の中の一枚で、若き日のナイチンゲールの肖像が描かれています。





切手は1983年イギリス領ヴァージン諸島発行の「看護週間切手」の中の一枚で、ランプを持つ端正なナイチンゲールの肖像が描かれています。





切手は2020年ジブラルタル発行の「ナイチンゲール生誕200年記念切手」で、若き日のナイチンゲールの肖像が描かれています。




 

0 件のコメント:

コメントを投稿

よもやま話-1.アテナとオリーブ-

ギリシャ神話において、女神アテナとオリーブは密接な関係があります。 アテナは、知恵、芸術、技術、戦争などを司る女神で彼女ゼウスの頭から生まれたとも、父親であるゼウスがティターン族の智慧の女神メティスを飲み込んだ際に、メティスの頭から生まれたともいわれています。 オリーブは、地中海...